2022.02.27 03:05杜のまなざし(52)~クリニコス~ 「にいさん、”クリニコス“って識ってるかい?」 その日、初めて会った二十代の路上生活者の「物語り」を、朝から昼近くまで、とつおいつ語るのに耳を傾けていた。ぽつりぽつりと語られた青年の「物語り」がようやくひと段落し青年が立ち去った時、近くの段ボールで囲われた毛布の中から、モソモソと“道傍の哲学者”がはい出して来た。 「ギリシ...
2022.02.11 00:20杜のまなざし(51)~老い~ 路傍の哲学者との対話Ⅱ 昨年、知人の医者から、樹遷さんを診させて下さい、と。若い秘訣を知りたいから、と。結果、30代ですね。と言って下さった。何とも好意のてんこ盛りである。75歳、後期高齢者と呼ばれる年齢の私を、30代とは!知人には老眼鏡が必要なのではないか?と真剣に案じた。その後、折に、いたずらごころを出して、冗談として私は肉...
2022.02.08 13:28杜のまなざし(50) ~路傍の哲学者~ 梅の香が馥郁とする。古びたビルの建てこんだ路地の奥、ビルに挟まれ押しつぶされそうな更に古びた木造家屋、その塀から枝を差し伸べ、奇跡的にビルの間を抜けてきた日の光に花芽をほころばせた梅の木。 暫し佇んでその健気な梅の花姿と香りを愛でた。「主なしとて・・・、だな。」低いしわがれた声がした。「春な忘れそ。」振り向くと、この近...
2022.02.02 13:13杜のまなざし(49) ~春待つ心~ 特別支援学校の生徒たちの書初めを見る機会があった。「春待つ心」~殆どの生徒が、多分教師から示されたお手本によって書いたのであろう同じ文言の書を書いている中で、唯一人「春待つ心」と書いていた。中学三年生のその女の子は、どんな春を待っているのだろう。どんな希望や夢や不安を抱いて春を待っているのだろう。どんな人生の旅路がこの子を...